Last-mile Delivery

与太話アンド Assorted Love Songs

I shall be released ボブディランのノーベル賞で思い出す 

今年もノーベル賞が話題になる時期がやってきた。 それで思い出したのが2年前のノーベル文学賞。 ボブディランが受賞した件。 今調べてみたら 結局受賞は辞退しなかったということを知った。

 

1970年代 ロックばかり聞いていた少年おれは ボブディランはそれほど好きではなかった。 まずは生ギター一本で演奏する音楽が退屈だったこと。 それから メッセージソングというか 音楽はさておき歌詞に重きをおく音楽に魅力を感じなかったこと、 そして彼らをとりまく 反体制やカウンタカルチャの雰囲気やそれを標ぼうする一派が好きではなかったこと などに由来する。 ついでに調子っぱずれで歌詞がメロディーから外れる歌いぶりも好きではなかったな。 そういう意味ではジョニ ミッチェルとかジョーンバエズなんていう人たちも興味がなかった。(ファンの方すみません)

 

たぶん1975年ころ ボブディランがそれまでのアコースティックな感じから急にエレクトリックな感じの、つまりロックっぽいアルバムを出して評判になったことがあった。 そのころよく行っていた横浜 阪東橋の クレオ というロック喫茶でも 主人のおじさんが好んでこれをかけていたのを思い出す。 ディスコグラフィーを調べてみたがたぶんこれは “Desire” というアルバムだろう。

 

そのころはアメリカのロックが好きで、フィルモアの軌跡なんていう映画を見て感動していた。 しばらくして “The Band” が大好きになり、彼らがボブ ディランのバックバンドだったということを知ってびっくりしたものだった。 その大好きだったThe Bandの解散に伴う 最終コンサートは 映画になり  “The Last Waltz” というアルバムで発表された。 

 

それで久々に家にあった 誇りをかぶったこのCDを引っ張り出して この “The Last Waltz” を 聞いてみた。 ライナーノーツを見たらこのコンサートは1976年のサンクスギビングの日に行われたそうだからもう40年以上前だ。 そうそうたる面々が出演している。 あの自閉症的な感じの ニールヤングが 歌うまえに “今 このような人々と一緒にこのステージにいることはぼくのこれまでの人生においてとてもうれしいことのひとつだ“ なんてゆるーい調子で話しているのにも驚いた。

 

そしてこの “The Last Waltz” コンサートの 最後の曲は ボブディランの曲 “I shall be released” だ。 これはたぶん ボブ ディランへの最大限の尊敬を表す選曲だったのではないか。 The Band の解散にあたり最後にボブ ディランへの尊敬と感謝を表すところが やはりこの人の偉大さを物語っているのだろう。 全員がステージにあがり 一番はボブディランが昔と変わらぬ調子っぱずれで歌いだす。そして2番はエリック・クラプトンが歌っている。 なぜエリッククラプトンが選ばれたのが知りたいところだ。 そして3番は再び ボブディランが歌う。

 

ボブ ディランの オフィシャルサイトの名前は “Minstrel Boy” だ。 これは彼の代表曲の一つからとったのだろう。 おれは曲は覚えていないのだが 歌詞はうろ覚えで覚えていて 確かそれは “Who throw a coin to such minstrel boy” (いったい誰がおれのような流れ者にコインを投げるだろうか)だと思っていた。 今回ネットで調べてみたら 実際は 

 

“Who's gonna throw that minstrel boy a coin?” 

 

だった。 まあ意味は同じだろう。 おれにコインを投げる人がいるだろうか と歌っていたボブ ディランが  反体制やカウンタカルチャの象徴的存在だった人が、 つまりもっとも賞とか栄誉とかが似合わない、遠い存在だった彼が 世界中が注目するような賞 栄誉をもらってしまったのは皮肉というか 負の予定調和というべきか。

本当は ボブディランが  “ I shall be released “ と言って受賞を辞退したらぐっと見なおしたのだけど。