Last-mile Delivery

与太話アンド Assorted Love Songs

かつて そこにあった

 

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散歩道

高校時代の修学旅行先。 晩秋 曇天の午後。 斑鳩を歩いていたら男女の他のGrと一緒になった。 聞けば自分たちの通う学校の近くの都立高校だった。 それからはつかづ離れず 同じようなコースを歩いた。 そして最後に、たぶん法起寺を出てお互いに帰路につくとき、その中の女の子の一人がこちらにカメラを向けて一枚写真を撮った。 

休日の午後、雨の中出かけるでもなく、何かを探すでもなく 本棚の列を眺めていたら 置き場所がなくなって 積み重ねた本の間に、古い山のガイドブックが目に入った。 東京周辺の山 山と渓谷社 1990年 6月改定 第5版発行 540ページ以上ある厚手の本だ。 表紙のイラストは小林泰彦 この方のイラスト好きだった。 

退屈な午後 ガイドブックを眺めながら仮想登山でもしようと、奥多摩秩父、とめくってみたら、北八ヶ岳のあたりのページから何かの紙切れのようなものが一枚舞い落ちてきた。 拾い上げてみると、それは大分黄ばんだ 一枚の古い写真だった。  

背景を見ればどこで撮ったのかすぐわかる。 山梨県の 夜叉神峠。 背景は南アルプスの白根三山。季節は、秋の午後。 多分 鳳凰三山へ行き、ここに降りて来た時にだれかに撮ってもらったのだろう。 思わず 過ぎ去った時間の長さを思い、動けなくなった。

 

写真とは不思議なものだ。 時間は止めることもできなければ逆戻りすることもできない。 写真はそのある一瞬を切り取ったもの。 その前後の事は見えてこない。 有名な言葉。 “かつて そこにあった ” 人生を連続したフィルムに例えてみる。 一人一人がそれぞれのコマ回しをしている。 だから誰かと撮った写真とはその連続した各人のフィルムの中でそれぞれが持つ唯一共通したコマなのだ。  

 

ガイドブックの間から出てきた一枚の写真。突然目の前に現れた20数年前の自分は、少し恥ずかしかった。