Last-mile Delivery

与太話アンド Assorted Love Songs

東京における南北文化疎外について

数年前、世田谷美術館に行った。 自分の家から直線距離で南方向に数キロではあるが バスを3本乗り継いでゆかなければならなかった。 (世田谷は道路が複雑で狭く、不便なことでも有名だが)東京における南北の移動は東西のそれにくらべると ぐっと便利さが落ちる。 電車 バスなどの交通機関も然りだが南北を走る幹線道路もいつも混雑しているように思う。  

 

東京は東西に走る鉄道は複数あるけれど、南北となると山手線、井の頭線武蔵野線が東西にかなりの距離を置いて走っているだけだ。 まあ 南北の一部を含めると西武線南武線があるのかな。 ついでに地下鉄東西線ができたのはずいぶんと昔だが 地下鉄南北線ができたのはつい最近ではある。 少し論理の押し付けになるかもしれないが、移動の困難さは文化の融合も妨げる のではないか。 あるいは東西の独自の文化の発展を助長するかもしれない。 

 

東西で言えばたとえば小田急線文化圏とか、京王線文化圏とか、中央線文化圏といったものがあるのかもしれない。 東急文化圏はあるだろう。 田園調布、成城学園あたりに象徴されるような。 昔石坂洋二郎という小説家がいてこの方の描く上流階級子女の青春恋愛小説はこのあたりが部隊になっていた。 西武線については鉄道にまつわる文化圏というよりはこの会社が描くライフスタイルとか価値観のようなものにいろどられた何かがあるように思う。 ちなみに自分はそれがそんなに好きではないし、野球チームもファンではなかった。 またその文化というか醸し出す雰囲気は、そのハブ駅であるところの池袋のイメージとはずいぶんかけ離れているように思う。

 

ちなみに東京における東西の文化分布というか格差については 都市=職場 都市からの距離=生活コストという切り口で偉い先生が歴史を含めて書かれていて(居酒屋考現学だったか)あるとき読んだのだ。

 

ところで最近よく井の頭線に乗る。気のせいかマナーがよくない印象がある。 これも強引な押し付けかもしれないが 井の頭線は南北に走っている。 もし東西沿線文化が存在するとすると南北を走る電車の中では 必然的に乗客間で文化の摩擦を生ずる。 電車は所詮 出発地と目的地をつなぐ手段でありそこでは 異文化の受容などは必要ない。 その結果サツバツたる車内マナーになるのかな なんて。 では南北を結ぶ電車の最たる山手線はどうか。山手線は東西を走る各電車を繋ぐ最大のループだ。 山手線の乗客同士はもはや最大の匿名同士だろう。  こんなことを考えるのも 最近電車によく乗るようになったせいかな。