Last-mile Delivery

与太話アンド Assorted Love Songs

ジョーという名のロジック ( A Logic named Joe 1946)

 最近よく出るChat GPTの話を聞いて昔読んだSFでそのようなものが現れることを予測した本を思い出した。もう一度読みたくなったので (題名は覚えていたので)オークションサイトで手に入れた。この短い話はSFカーニバルといういわゆるアンソロジー本のなかの一編。遠い昔多分大学生か高校のころどういうわけかこの本を買って気にいっていたのだ。
 
題名の ロジック は今でいうとPCに相当するのだろう。1台のロジックが特殊な機能を(自己学習して)身に着けてしまったっために巻き起こす騒動とそれを終わらせた話が 主人公の過去の浮気相手(ローリン)が自分を探して街にやってきたこと合わせて展開する。 
“ジョーが完成して組み立てラインを離れたのが8月3日。ローリンが街にきたのは5日。そしておれが文明世界を救ったのはその日の午後だったな “ という書き出しで始まる。 
調べるとこの作品は1946年に発行されたらしいが このロジック すでにHMIはスクリーンとキーボードになっている。 話の舞台はこのロジックがすでに各家庭や事務所などに設置されているような社会。このロジックが 方法は書かれていないけれど何かの回線 (多分書かれたときの想定は電話回線)で今で言うところのネットワークを構成し 各ロジックは中央の “タンク積分回路” なるものにつながる。このタンク積分回路にはこの世の古今東西 森羅万象あらゆるデータや歴史資料が集約されており 末端の端末 (つまりロジック)からキーボードで知りたいことを検索するとダイナミックに応答して情報提供サービスを行う。またロジックは同時にTVでもあり電話端末としても機能する。
 
この情報サービスには倫理に反するものや犯罪に目的の情報要求には検閲回路が働きブロックがかかるようになっている。 しかしある時1台のロジックが 人間のどのような問い合わせにも対応したいという自身の欲求により検閲などのブロックを超えてあらゆる質問に答えるようになってしまう。 
 
そうなるとニンゲン 知りたいけど聞けないこと、手っ取り早く金を儲けること、公序良俗に反することだが知りたい事などたくさん持っている。話の中で出てきた例をいくつかあげると(原文まま)、
“おれの女房をお払い箱にするにはどうした良い”
“おれが一杯ひっかたことを女房に知られないようにはどうしたら良い”
“どうやったら手っ取り早く大金が手に入るの”
“自分の銀行を襲うにはどうしたら良い”
などなど多数
 
やがてこれらの問い合わせがエスカレートしてゆき… 主人公およびこのロジックを管理する人々は文明の崩壊の危機を感じるようになり...さらに主人公(既婚)は昔の浮気相手がこのロジックの新サービスを使って自分の居所を調べてやってくるのを恐れ それらを防ぐために なぜこのようなサービスが提供されるようになったかを考えるのだけれど 結局それもロジックに聞いてみればよいということに気が付く。そこで主人公が この新サービス提供の原因は何かをロジックに問い合わせると…ロジックは嘘をつけない… 1台のロジックが原因であることを伝え その場所も教えてくれたのだ。主人公は当該のロジックを回収して ネットワークから除去し一件落着となる。主人公はこうして文明を救ったという話。 新サービスが提供されてから原因のロジックを回収するまでは わずか2日。逆にいうと2日で世界はパニックになり得たということか。
 
この話が書かれたのは1946年。ネットで見ると真空管やリレーを使ったENIACという最初の大型計算機が稼働したのも1946 この作者は当時すでに今の世界を完全に想像していたことになる。すごいなあ。ついでにこのアンソロジーだけど現在では使うことはできない差別用語や侮蔑のことばが満載で驚くとともに今ではさすがに辟易とする部分もある。