ぼくもさすがに今日は職場で泣けてきそうだった。 海外で駆け回る仕事をしたくて入った会社だけど 上司のおっさん まるで海外営業マンとは対照的なただのオヤジだ。 ことあるごとにぼくを捕まえては “んまえなー、営業っつーのはなー、ハートなんだよハート。 ダメ元で押して押して押しまくれ。 こーれーがヒタチのエレベーター ねえ 押して押してー なんつってな キャハハ キミ この歌知ってる?” なんて言う。
ぼくは知っている。 このヒトの宴会芸これしかない。 いつも歌う春歌。 面白いと思った事は一度もない。 “前を開いてさあお乗り これがヒタチのエレベーター さあ 乗って乗ってえー” というのも不覚ながらもう覚えてしまった。 このヒタチをテーマにした春歌はその製品事業毎にあって、エレベータ(乗って乗ってえー)、ブルドーザー(押して押してえー)、ジューサ―(回せ回せ―だったかな)とかあったな。 幸いヒタチさんはお客じゃないからよいけど。 “キョーもオサケが飲めるのは、ヒタチさんのおかげです ヒタチさんありがとー ありがとーありがとー ”なんていうのもあったな。 不覚にも覚えてしまったではないか。 ぼくのプライドがゆるさないけど。
それから何かというと自慢話。それも自虐で少し味付けしたようなトーンだから悪趣味だ。 “おまえ 飛び込み営業やったことあっか? おれなんか昔 そこに煙突があれば飛び込んだもんだ。 スラマーレイクム 鉄板一枚でも良いから注文下さいな インシャラー なんて言ってよ。 若いころはスッポンのxx(自分のファーストネーム)と呼ばれてよ”
ぼくの持論は 成功体験は人の成長を妨げる だ。 特に上司の哲学やら信念が成功体験に根差している場合 その組織やアクションプランにはそれ以上のカイカクはないと思っている。
そんな日々、ぼくの追いかけていた案件が 色々な条件のなかで困難な状況になってきた。 そこで ぼくは 最近のMBA研修で学んだ クリティカルシンキングの手法を使って イシューを明らかにし、さらにロジックチェーンを使って最適と思えるアクションの計画書を作った。 わはは どうだ。
それを持って上司のところに行き 現在の困難な状況を話したら ぼくの練り上げたアクションプランにはまともに目も通さずに “そこをナントかしろ” とか “そこを何とかだ!” という。 ぼくは 上司に向かって そもそも そこをナントか とはどういう意味ですか と聞いてみた。 (ぼくは常々 ロジカルに物を考えようとするときに 英語で考えるくせをつけている。英語ではロジカルでないことをうまく表現できないからだ。 そこを何とか を 表現する 英語はない。なぜならそういう概念がそもそも存在しないからだ。 だから そこをなんとか はロジカルじゃない)
上司は そこを何とか の意味を問われて ぼくの質問にストレートに答えることなく、大和魂でなんとかしろ と言う。 続けて メードインジャパンだ。 安全第一、品質第一 お客様は神様じゃ どーじゃ 分かったか 分からんか 何故じゃー どうしてじゃー とはじまってしまったので ぼくはもうこれ以上会話を続ける意味もないと判断し、 ”分かりました“ と 何が分かったのか自分でも分からない常套句を言ってその場を去った。
どうしても腹の虫が収まらなかったぼくは、 その後 上司を部屋の隅に呼び出して すごんでみた。 知ってるぞ 股引はいていること。 夏はステテコだし。 ブリーフのことを猿股 なんていうことも。 カレイ臭 気にしてムスクのコロンつけてること、そのほかいろいろ。 すると上司は驚いたことに 真顔になって えーごめんごめんご インディアナポリス でもポリスじゃないよ などと言いつつ お願いだからxxちゃん(我が部イチバンのカワイ子ちゃん。独身24歳)には言わないでね ねッ ネットワークでいろはにほへと なんて媚びやがって。 でも分かった このおやじ黙らせるのは簡単だ。 冬は股引。 夏はステテコ ようよう白くなりゆく生え際 だいぶ進みて 重なりたる白髪のたなびきたるもまたおかし。
注:
・文中不適切な表現がありました。
・辞書で調べたら そこをなんとか に対応する英語はあるような。Have a heart とかベストエフォートとか
・文中の おやじ、あるいは ぼく は 筆者とは関係ありません。
ある方の記事に感銘を受けて書こうと思いましたがとてもその高みに達することはできませんでした。